サイトリニューアルのRFPの作り方|要件が決まっていない段階から書き始める手順
こんな人におすすめ
- サイトのリニューアルを検討し始めたが、社内から要件がまだ上がっていない方
- RFPに何を書けばよいのか分からず、手が止まっている方
- 専任の担当者がいない状態でリニューアルを進めることになった方
- 制作会社にRFP作成を手伝ってもらうべきか迷っている方
✓ この記事のゴール(読了目安 約10分)
要件が決まっていない段階からRFPを書き始める手順を理解し、制作会社へ渡せるRFPのたたき台を自社で作れるようになること。
サイトのリニューアルを検討し始めた段階で、RFP(提案依頼書)を作ることになった。しかし社内から要件はまだ上がっておらず、何を書けばよいのか分からない。そのような状態で手が止まっている方に向けた記事です。
公開から年数が経過したサイトは、情報が継ぎ足された結果としてページ数が膨らみ、どこから手をつけるべきかの判断が難しくなります。専任の担当者がいない組織であれば、社内だけで要件を固めるのはさらに難しくなるはずです。
本記事では、要件が決まっていない段階からRFPを書き始める手順を解説します。読み終えたときに、制作会社へ渡せるRFPのたたき台が手元にある状態を目指しましょう。
要件が決まっていない段階でも、RFPは書ける

要件が固まっていない段階であっても、RFPは作成できます。RFPは決定事項の一覧ではなく、自社が抱えている課題を提示して、その解決策を各社から提案してもらうための文書だからです。
例えば「問い合わせが減っている気がする」という感覚しか手元になくても、そこから書き始められます。数字が出せないのであれば、いつ頃からそう感じているのか、社内の誰がそう言っているのか、どのページを見ていてそう思ったのかを並べていけば、それがそのまま課題の記述になります。
逆に、仕様まで確定しているならRFPという形式そのものが不要です。例えば「WordPressで作り、既存の300ページを移行し、2027年3月に公開する」まで決まっている状態は、提案依頼書ではなく仕様書と呼ぶべきものになります。RFPという形式を選ぶこと自体が、解決策をまだ自社では決めきれていない状態を前提としています。
弊社にご相談をいただく段階でも、依頼内容がまだ定まっていないケースは珍しくありません。「何をどう直せばよいか分からないので、そこから相談したい」という状態です。
ここで要件の確定を待ってしまうと、リニューアル自体がいつまでも始まりません。先にRFPを作り、そこに書いた課題を軸として社内の要件を集めていくほうが、結果的に早く進みます。
要件が決まるのを待つ必要はありません。決まっていない段階から書き始めることが、RFP作成の現実的な進め方です。
RFPに書く項目|先に埋める7つと、後で埋める8つ

RFPの記載項目として20項目前後を挙げている資料が一般的ですが、要件が決まっていない段階でその全てを埋めようとすると、たいてい手が止まります。
先に埋めるのは、次の7項目です。いずれも要件が決まっていなくても書けます。
項目 | 書き方 |
|---|---|
1. 会社概要・事業内容 | 既存サイトのURLを添えるだけでも可 |
2. リニューアルを考えたきっかけ | 起きた出来事をそのまま書く |
3. 解決したい課題 | 数値があれば数値、なければ状態のままでよい |
4. 誰に、何をしてほしいサイトか | 現在の顧客像でもよい |
5. 動かせない日付 | イベント、予算年度、契約更新など |
6. 予算の枠 | 未定なら「相談したい」と明記する |
7. 提案してほしいこと | 自社では決められない部分を、決められないと書く |
2項目目の「きっかけ」であれば、例えば「採用の応募者から、サイトが古いと言われた」「営業先で画面を見せたら、事業内容が伝わっていなかった」「スマートフォンで開いたら文字が小さくて読めなかった」といった、実際に起きた出来事をそのまま書くだけで埋まります。社内で議論して言葉を整えるのは、後からでも間に合います。
7項目目が、このRFPの中心になります
決められないことを明記しておくと、制作会社はそこを提案の中心に据えます。空欄のまま渡した場合は、決まっているものとして扱われるか、確認のやり取りが増えていきます。
後で埋める項目は、機能要件・デザイン要件・技術要件・CMSの指定・サーバー、ドメインの扱い・対応ブラウザ・ページ構成・納品形態の8つです。いずれも専門的な判断を伴うため、社内で先に決めておく理由はほとんどなく、むしろ決めてから渡すと選択肢を狭めることになります。
RFPは、どこまで細かく書くべきか

RFPは、細かく書けば書くほどよい文書というわけではありません。仕様レベルまで固めたRFPは、かえって提案を受けにくくなります。
例えば「トップページに新着情報を5件表示し、更新は管理画面から行う」と書かれていた場合、読み手はこれが絶対条件なのか、いまのサイトの仕様をそのまま書き写しただけなのかを判断できないまま見積もることになります。CMSの標準機能で足りる話なら確認は要りませんが、独自開発が前提なら金額は変わるはずです。結果として返ってくるのは、「ご要望どおり実装します」という、確認も提案も含まない回答になります。
どこまでが決定事項で、どこからが相談事項なのか。すべてが同じ調子で書かれていると、読み手にはその境目が見えないままです。
Web集客全般・データ分析・Web制作會野康祐弊社が受け取るRFPでも、細部まで決まっているものほど確認の手間が増えます。細かい仕様を前提に進めようとすると、途中で「実はそこは決まっていなかった」という箇所が出てくるためです。
もうひとつ注意したいのが解決策の書き方で、「この機能を入れたい」「この構成にしたい」と書かれていても、なぜそうしたいのかが添えられていなければ、提案する側は判断のしようがありません。
例えば「サイト内検索を付けたい」とだけ書かれていたとします。目的が採用ページを見つけやすくすることなら、検索よりもメニューの整理のほうが効くかもしれませんが、理由が書かれていないかぎりその提案は出てきようがなく、書かれた機能をそのまま見積もった回答が返ってきます。
課題だけが書かれているRFPのほうが、提案は出しやすくなります。項目を埋める程度で十分です。
ただし、制作会社に何を求めるかで変わります
ここまでは「細かく書きすぎないほうがよい」と述べてきましたが、これは制作会社に何を期待するかによって変わります。
自社の状態 | 制作会社に求めること | 選び方 |
|---|---|---|
RFPも要件定義も自社で固められる | 手を動かすこと | コスト重視でよい |
要件をうまく整理できない | 一緒に整理すること | コスト以外で選ぶ |
要件定義まで自社で完成させられるのであれば、制作会社の役割は実装に絞られるため、価格の安い会社を選ぶのが合理的です。
一方、要件やRFPをうまくまとめられない状態であれば、制作会社にはその整理から関わってもらうことになります。このときに価格だけで選ぶと、整理の質がそのまま成果物の質になって表れます。
まず、自社がどちらの状態なのかを見極めましょう。
細かく書けないこと自体は悪いことではありませんし、書けないのであれば、書けることを前提にした会社の選び方をすればよいだけです。
たたき台はAIで作ってよい。むしろ推奨します

RFPのたたき台は、生成AIで作るのが早道です。項目の洗い出しと文書の骨組みについては、人が一から書くより速く整います。
ただし、使い方には注意点があります。AIが得意なのはあくまで一般的な情報を集めて整理することであり、リニューアルを考えたきっかけ、自社が実際に困っている状態、社内の制約といった社内にしかない情報については、一般的な表現で埋めるしかありません。
例えば「ユーザビリティの向上とブランディングの強化を図る」。課題の欄にAIが書きがちな一文です。文章としては成立していますが、どの会社のRFPに置いても違和感がないため、提案する側はこの一文から何も読み取れません。
AIに任せてよい | 人が書く |
|---|---|
項目の洗い出し | リニューアルのきっかけ |
文章の整形・体裁 | 自社の課題の中身 |
提案依頼の定型文 | 予算・納期・体制の制約 |
AIが出力した内容を、そのまま細部まで確定事項として提出すると、前章で述べた問題が起きます。一般論として書かれた仕様が決定事項として扱われ、進行の途中で「実はそこは決まっていなかった」と判明する流れです。
Web集客全般・データ分析・Web制作會野康祐実際に他社のRFPで商談を受けたとき、AIで作られていることは一読して分かりました。ただ、それ自体を問題だと思ったことはありません。気になるのは、中身が一般論のまま出てきたときだけです。
AIで作成したことは、堂々と出して構いません。受け取る側には分かりますが、それ自体が問題視されることはありません。
AIでたたき台、自社固有の3か所は人が上書き
この分担であれば、AIは有効に働きます。
埋められない項目は、空欄のまま出してよい

全ての項目に回答が揃っていなくても、RFPは提出できます。回答の網羅は、提案を受けるための条件ではないからです。
ただし、空欄のまま渡すのと、「決まっていない」と書いて渡すのとでは、返ってくる提案が変わります。空欄は「重要ではない」とも「未定」とも読めるため、制作会社は判断に迷います。
例えば「対応ブラウザ」の欄が空欄だった場合、制作会社としては、指定がないから最新のブラウザだけを見ればよいのか、それとも社内に古い端末が残っていて確認が要るのかを判断できませんが、ここに「社内で確認中」と一行あるだけで、見積の前に聞くべきことがはっきりします。
そのため、埋められない項目には次のいずれかを記載してください。
- 決まっていないので提案してほしい
- 社内で確認中のため、後日共有する
- 今回の対象外とする
この記載が、そのまま7項目目の「提案してほしいこと」になります。埋められない項目を洗い出す作業は、提案してほしいことを整理する作業と同じです。
分からないことを分からないまま渡すのは、準備不足ではありません。どこが決まっていないかを把握できている状態が、整理された状態です。
【重要】制作会社にRFP作成を手伝ってもらうのは、公平なのか

RFPの作成支援を制作会社に依頼することは可能です。ただし、支援した会社が提案で有利になるという点は、事実として認識しておく必要があります。
RFPの作成過程では、社内の課題や予算の背景といった、文書には書ききれない情報が共有されます。例えば「予算はこの額で出しているが、実際にはもう少し動かせる」「役員がこの機能にこだわっているが、現場は必要だと思っていない」といった話は文書に残らないまま打ち合わせの中で出てくるため、それを聞いている会社と、RFPだけを読む会社とでは、提案の精度に差が生まれます。
これは支援を受ける以上、避けられない構造です。依頼する前に、次のどちらを選ぶかを決めておきましょう。
進め方 | 内容 |
|---|---|
A. 相見積もりを取る | RFP作成の支援と、制作の提案を分けて考える。支援を有償で切り出す、支援した会社にも同じ条件で提案してもらう、といった形にする |
B. 支援した会社に任せる | 相見積もりではなく、随意契約に近い進め方。それ自体は問題ないが、社内には相見積もりと説明しないほうがよい |
どちらを選ぶかを先に決めておけば、支援を受けること自体は公平な進め方として成立します。問題になるのは、AとBが曖昧なまま進んだ場合です。後から選定の公平性を問われることになります。
まとめ
RFPは、要件が決まってから書く文書ではなく、決まっていない状態を整理して、決められない部分を明示するための文書です。
先に埋める7項目から着手し、たたき台の作成にはAIを使い、埋められない項目には「提案してほしい」と書く。この順番で進めれば、社内の要件が固まる前でも提出できる状態になります。